スポーツ選手の栄養
ジュニア選手の栄養;
子供は大人に向かっても心も体も発育・発達している段階に ある。特に、体の面では、新陳代謝が活発におこなわれ、体格 の割りに栄養所要量も高い。
| 男子 6~8歳 |
| 身長(cm) | 121.9 | |||
| 体重(kg) | 24.6 | |||
| 生活活動強度 | Ⅰ低い | Ⅱやや低い | Ⅲ適度 | Ⅳ高い |
| エネルギー(kcal) | 1650 | 1900 | ||
| 蛋白質 (g) | 60 | |||
| カルシウム(mg) | 600 | |||
| 鉄(mg) | 9 |
| 男性 30~49歳 |
| 身長(cm) | 169.1 | |||
| 体重(kg) | 67 | |||
| 生活活動強度 | Ⅰ低い | Ⅱやや低い | Ⅲ適度 | Ⅳ高い |
| エネルギー(kcal) | 1950 | 2200 | 2550 | 2850 |
| 蛋白質 (g) | 70 | |||
| カルシウム(mg) | 600 | |||
| 鉄(mg) | 10 |
上記の二つの表はスポーツをしていない人の栄養所要量を<
表す。見たとおり子供の体重は大人の4割弱しかない、しかし
エネルギー所要量は大人とほとんど差がない。さらに、体をつくる
材料となる、蛋白質、カルシウム、鉄の所要量もほとんど
変わらない。
つまり一生懸命にサッカーの練習をしている子供であれば、
U-8であっても、お父さんよりたくさん食べてもよいレベルに
ある。さらに小学校高学年以上になれば、サッカーをして
いなくても大人なみ以上の所要量となるので、十分な食事量
を確保しないと、健全な発育・発達に悪影響を及ぼしかねない
指導者も保護者も、まずこのことを意識しなければならない。
食事の基本はフルコース型;
| ①主食 | ②おかず | ③野菜 |
④果物 |
⑤牛製品 |
|
| 主な 役割 |
エネルギー源 | 体作りの 材料 |
体調の 調節 |
体調の 調節 |
体作りの 材料 |
| 主な 栄養素 |
糖質 |
蛋白質 脂質 鉄 |
ビタミン ミネラル 食物繊維 |
ビタミンC 糖質 食物繊維 |
蛋白質 カルシウム |
| 商品名 | ごはん パン パスタ 麺類 いも エネルギー フース |
肉 魚 卵 納豆 豆腐 プロテイン パウダー 鉄補助食品 |
貝の多い 味噌汁 煮物 サラダ 野菜 炒め 野菜 スープ ビタミン 補助食品 |
果物各類 果汁100%ジュース ビタミン 補助食品 |
牛乳 ヨーグルト チース カルシュム 補助食品 |
選手が自分で食事を考えるには栄養フルコース型という考え かたを用いるとよい。 栄養フルコース型の食事は、主食、おかず、野菜、果物、 乳製品の5大栄養がまんべんなく摂取できる。 主食には糖質が多く含まれるので、脳と筋肉のエネルギー源が 確保できる。おかずと乳製品には蛋白質、脂質、カルシウム、 鉄が豊富に含まれるので、筋肉・骨格・血液などの体づくりに 貢献する。そして、野菜と果物でビタミン、ミネラル、食物繊維 を摂取し、コンディションをととのえる。男子サッカA代表の 合宿時のメニュー例は上記の図のとおりである。
サプリメントの活用;
サプリメントは、食事では不足する栄養素を摂取するための栄養
補助食品のことであり、蛋白質を補給するプロテインや、
ビタミンおよびミネラルのタブレットなどがる。
各サプレメント類について説明しよう。。
①プロテイン;
プロテインパウダーは、牛乳タンパクのカゼイン、ホエイと大豆タンパク
などを原料とし、目的によってそれぞれ単体あるいは配合
されて製品化されている。パウダー状がしゅりゅうであるが、
ゼリードリングやバー食品も見られる。筋トレ期や、食事でおかず
を十分に食べられない場合などに、サプリメントとして用いる。
しかし、吸収を速めるためペプチド状に分解したものなど、
運動直後に飲むために、消化器官へ負担を軽くするように
設定されたものもある。
また、減量のために食事制限をする選手にも、プロテインの摂取
は有効である。
②ミネラル;
ミネラルの位置づけもサプリメントであり、カルシウム、鉄、および
複合型のマルチミネラルがある。乳製品の摂取量が不足
している場合はカルシウムを貧血気味の選手はミネラルの
吸収を高める成分として、フラクトオリゴ糖を配合した製品が
見られる。
③ビタミン;
ビタミンの位置づけもサプリメントであり、ビタミンB群、Cの水溶性
ビタミンと、脂溶性ビタミン(A,D、Eなど)も含んだマルチビタミンが
ある。ビタミン摂取による競技力向上を検証した研究は多く
見られるが、いまだ決めて手になるようなものはない。しかし、
すべての選手がエネルギー消費に見合った広範囲の食品を含む
食事を取っていると仮低するもの、正しいとはいえない。
よって水溶性ビタミンの摂取は第一に心かけたいものである。
④分岐鎖アミノ酸;
タンパク質を構成するアミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンの
3種類が分岐鎖アミノ酸(Branched chain amino acids BCAA)
であり特徴的なのは、筋でエネルギーとなることである。一般に、
持久的運動であっても瞬発的運動であっても、筋グリコーゲン
が枯渇してくると、筋タンパクが分解され、エネルギー源として利用
されることが知られている。このような場合のBCAA補給は、筋タンパクの分解とエネルギー化を抑える意味で有効である。
サプリメントの考え方;
一般に、サプリメントは食事改善を十分にしたうえで、それでも
不足する栄養素が見られる場合に試用するように指導したい
しかし、現実は選手に十分な食事改善が望めない場合が
ほとんどである。例えば、自炊する選手であって、トレーニング
時間が長く、アルバイトもしなければならないような状況では、
十分な栄養が摂取できる選手は少ないと思います。
また偏食やアレルギーがあったりして特定の食品が食べら
れない場合、減量のため摂取エネルギーを制限しているが
タンパク質ミネラル・ビタミンは所要量以上に摂取しなければ
ならない場合などである。しかし、試合はまってくれない。
常に理想の食事ができる一部のエリート選手を除けば、サプリメントを試用してまず栄養バランスを整え、コンティーション
を整え、試合に臨むことも必要であろう。
食事をいい加減にしてサプリメントに頼るというのは本未転倒で
あるが、自分の目的と食事内容をよく把握して、サプリメントを
選んで試用するならば、選手にとって一つの有効なスキールと
なり得る。そして、そこから栄養の必要性を再確認して、食事
改善に取り組むということもあってよい。
また、近年、海外のサプリメントにドーピング禁止薬物が混入して
いたためにドーピング違反になった例があり、サプリメントの
安全生が一層問われるようになってきた。
日本では、2002年に日本アンチドーピング機構(JADA)が発足し、ドーピングの観点から安全と認めたサプリメントにJADAの公認マークを与えている。
詳しくはJADAのホームページに公認商品が掲載されているので参照されたい。
http://www.anti-doping.or.jp/#SlideFrame_1 へのリンク
試合前の栄養摂取;
試合当日および栄養補給は、パーフォーマンスに大きく栄養 する。時に、試合前はこれまでのトレーニングの総仕上げの 栄養であり、試合後は蓄積した疲労からの回復の栄養と 位置づけられる。糖質および資質の項で述べたように、サッカー の試合でエネルギー発揮の鍵を握るのは、筋グリコーゲン含量で あり筋グリコーゲン枯渇すると、エネルギー源として糖質が利用 できなくなるだけでなく、脂質からのエネルギー生産能力も 低下することにより、高いパーワーも速いペースも維持できなく なる。そこで、運動中に糖質を継続的に利用できるように、 試合当日の栄養補給は糖質の摂取を中心に研究されて きた。
☆ここで試合前に栄養摂取の注意点を見てみよう
| ① | 筋肉のエネルギー源としての筋グリコーゲンを貯える |
| ② | 脳のエネルギー源としての肝グリコーゲンを貯える (あるいは血中ブドウ糖濃度を維持すること) |
| ③ | 体調を整えること |
| ④ | 温度を上昇させ、やる気を起こすこと |
| ⑤ | 空腹感をなくすこと |
| ⑥ | 消化に時間のかかるものを避けること |
| ⑦ | 腸内にガスがたまるようなものを避けること |
①②は栄養素として糖質であるが、⑤を満たすためには複合
糖質(デンプン)が適している。③はビタミンB群、C および
ミネラル類であるが、⑦より野菜は食物繊維が多いので避け、
果物を選ぶ方が良い。④は糖質およびタンパク質であるが、
タンパク質の中でも⑥を考慮すると、脂肪の多い食材や調理法
は避ける。このように考えると、試合前の食事は、糖質主体の
消化のよいものとし、試合3~4時間前には食べ終わっている
ようにする。こうすれば食べたものは十分に消化され、運動前
には血糖値やインスリンなどのホルモンレベルも正常になって
いるのであろう。実際、運動4時間前に312g(1248kcal)
の糖質を摂取したところ、持久的運動パーフォーマンスが
15%向上したという報告もある。早期の試合であっても、
上記の条件を満たした朝食をとってから臨むことが大事
である。
試合直後の栄養摂取;
運動中止すると、骨格筋でグリコーゲン合成が始まる。この
タイミングを利用して、計画的に糖質摂取することは、回復を
速めるのに重要である。筋グリコーゲンの回復を早めるには、
運動後2時間経過してからよりも運動直後にマルトデキストリン
を摂取する方が有効であることが示されている。必要摂取量
は体重1kgあたり0.7g以上であり、体重70grの選手では
50g(200kcal)以上を目安とする。ただし、この50gという
摂取量で、筋グリコーゲンが完全に回復するわけではない。
しかし、少なくともインスリン分泌を高め、体を運動(分解
あるいは異化)モードから回復(合成あるいは同化)モードに
切り替えるには十分な量である。激しい運動の直後に糖質
摂取を怠ると、からだは脳のエネルギーでもある糖質を得よう
とするので、消耗は時間とともにさらに逞行していくのである。
また、糖質とタンパク質を3:1の割合に処方したドリングの摂取
より、筋グリコーゲンの回復が糖質単独摂取よりも高まることも
報告されている。これは、運動後の筋の材料を補給する上
でも有効な方法である。
筆者らは試合直後の栄養摂取として、ロッカールームに戻った時に
マルトデキストリンとアミノ酸をすすめ、シャワーを浴びて落ち着いてから
プロテインと糖質を配合したゼリーを進めている。これらは、消化
吸収に時間がかからず、現状で考えられる最適のもので
あるので、レベルの高い選手に進められるものであるが、
ジュニアのチームであれば果汁100%のオレンジジュースや
アップルジュース、そして牛乳やヨーグルトなど用いるとよい。



