スポーツ選手の栄養
サッカー選手と栄養
- 身体活動のエネルギー源
- 体づくりの材料
- 体調を調節する栄養
栄養は健康に生きるために必要な3の役割、すなわち、
身体活動のエネルギー源となること、体づくりの材料になる
こと、体調を調節することを担っている。
サッカー選手の場合は、トレーニング、そしてゲームで最高の
パフォーマンスを発揮することを目的するため、日常の生活で
使われるエネルギーと栄養そ素だけでは、賄うことは
できない。サッカー選手は、第1に、骨格筋のエネルギー源
物質を蓄え、筋運動も脳の指令下にあるため、脳の
エネルギー源も補給しておかなければならない。第2に、
新陳代謝が亢進するため、身体合成のための材料をより
多く摂取する必要性がある。
第3に、運動に伴う多段階の科学反応の補酵素として動き、
さまざまなストレスにも対応する微量栄養素も、不足がない
ようにしておく必要がある。微量栄養素は、また汗とともに
排泄されるため、その分も考慮して補給しなければならない。
トレーニング量が多い選手ほど、速やかに疲労を回復して
次のトレーニングや試合に備えるようにしなければ、やがで
慢性的に疲労が蓄積してしまうのである。
選手の食事についてしばしば言われるのは、「バランスの
良い食事をしよう」ということでである。
しかし、競技力の向上を考える場合に、シーズンとしての;
- 通常練習期、
- 強化練習期、
- 筋力トレーニング重視期、
- 試合前調節期、
- 試合期
などがあり, また選手個人によって
- 減量期、
- 増量期、
- 怪我からの回復期
などさまざまな目的があるため、これに応じて理想的な栄養バランスは変化しなければ
ならない。つまり、バランスの良い食事に基本型がある
ものの、状態に応じて応用を利かせなければならないの
である。
選手は栄養バランスを食べるものではない。食事あるいは
料理を食べるのであるから、理想的栄養バランスの食材を、
いかにおいしく食べるかということも忘れてはならない。
なぜならば、食事の一次機能は「健康に生きるために必要な
栄養素を摂取することであるが、二次機能は「おいしくたのしく
リラクスすること」だからである。
トレーニング量が多くて疲れている選手ほど、食事に対して
二次機能を強く求める傾向が認められるために、個人食欲、
嗜好や直観に任せていると、理想的栄養バランスから著しく
逸脱してしまうことさえある。
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サッカーと5大栄養素
高い競技力を保持する体には、筋、脳、内臓に十分な
エネルギー源を蓄えていること(エネルギー)、そのポジション
に見合った筋肉や骨格をつくること(からだづくり)、トレーニング後や試合前の体調をト整えること
(コンディショニング)の3つが必要である。
3つには、5大栄養素がおおむね下記の図のように関係している。
エネルギーとなるのは、糖質、脂質、蛋白質の3種類である。
通常の生活活動においては、糖質と脂質が約1:1の割合で
エネルギーを生み出しているが、運動強度が高まるにつれて
糖質n割合が高くなる。蛋白質は糖質不足のときのように、
いわゆる飢餓状態のエネルギー源であり、状態に応じて全体
のエネルギーの3~15%を占めるといわれる。
からだづくりには、蛋白質がもっとも重要であり、ミネラルがそ
の補助をしている。脂質も細胞膜や体脂肪組織を形成するの
で、体づくりに関係する。
| エネルギー | 糖質、脂質、蛋白質 | |
| 高い | ||
| 競技力 | からだづくり | 脂質、蛋白質、ミネラル |
| 保持する体 | ||
| コンディショニング | ミネラル、ビタミン |
糖質(炭水化物);
糖質は、主食として食されるごはん、パン、めん類、いもなど
の穀物でんぶんおよび砂糖などの糖分に多く含まれる。
食物線維と合わせて炭水化物と呼ばれる。
体内であは、グリコーゲン(ブドウ糖の重合体)として、筋と
内臓に蓄積される。肝グリコーゲンは、脳の唯一の
エネルギーとしてブドウ糖を供給し、運動中の骨格筋の
エネルギーも補充する。
骨格筋。骨格筋1kgあたりの平均グリコーゲングリコーゲン
濃度は、約13gであり、体重70kgの成人では、筋は全体重
の約40%を占めるので、グリコーゲン含量は約360gとなる。
糖質のエネルギーは1gあたり4kcalなので、骨格筋
グリコーゲンのエネルギーの量は、約1440kcalである。
加えて、成人の肝臓は約90g(360kcal)のグリコーゲンを
含むので、貯蔵糖質のエネルギー量は約1800kcalとなる。
運動において糖質は、強度の高い運動の主要エネルギーと
なるので、筋グリコーゲンを確保するために、主食を三度の
食事でしっかりと食べることが重要である。 サッカーのように
繰り返しスプリントを行うスポーツでは、キングリコーゲン含量
が低いプレイヤーは、十分なストックがあるプレーヤーに
比べて、運動強度を維持して走ることができない。
糖分は即効性があるものの、多量に摂取すると急激な
血糖値の上昇と、それに伴うインスリンの分泌による血糖値
の低下を招くので、運動までに時間のない時に少量を摂取
する。
例えば、運動の直前などは、主食を食べても消化吸収する
時間がないが、糖分ならすぐにエネルギーになるので都合が
良い。
脂質(脂肪);
脂質は、各類の油、バータ、マヨネーズ等の調味料、肉、卵、
乳製品、などに含まれる。脂質は、主として脂質組織細胞に
中性脂肪(トリグリセリード)として貯蔵され、有酸素運動で
エネルギー源として消費される。加えてステロイードホルモン
の材料になり、ボディコンタクトの際は衝撃を和らげる
クッションになる。
脂質は、糖分の貯蔵に比べてはるかに豊富に存在し、
エネルギー量も高い。例えば、男子の一流選手では体重の
約10%が脂肪である。脂肪を完全に酸化すると、1gあたり
9kcalのエネルギーを発生させるので、70kgの選手で約
60.000kcalとなる。そのため、グリコーゲンとして蓄えた
エネルギーは、脂肪として蓄えたエネルギーの3%に
過ぎない計算になる。
現在の日本選手は、脂質に関してやや過剰摂取気味である。
スナック、菓子、インスタント食品、あるいは洋風の料理に
多く含まれるので、むしろ過剰摂取に注意しないと、体脂肪
の増加を招き、逆にパフォーマンスレベルを低下させて
しまう。
蛋白質
タンパク質は、肉、魚、卵、乳製品と大豆製品(納豆、豆腐)
に多く含まれる。エネルギーとしては、マラソンなどの長時間
運動あるいは高強度のウェイトトレーニングにより、構成単位
であるアミノ酸に分解され、これが酸化されてエネルギーを
生み出すことが知られている。また、減量種目に見られる
ような極度の食事制限では、体内の糖質不足により血糖値
を維持できなくなるので、筋タンパクを分解して得られる
アミノ酸から糖新生を行い、脳のエネルギーを確保する。
このように、タンパク質がエネルギー化されるのは、かなり
栄養不足の状態であるので、糖質を多く含む食品を十分に
食べておき、タンパク質はからだづくりのために摂取すると
考えたい。
ミネラル
ミネラルは多く種類があるが、からだづくりとコンディーショニング
に重要であり、選手の食事で不足となりがちなものとしては
カルシウムと鉄がある。
カルシウムは体内の99%が骨や歯の形成に用いられるが、
残りの1%は筋の収縮や神経の伝達を調節している。
運動をすると汗からの喪失が起こるため、食事からの摂取
が不足すると、骨からカルシウムが溶け出して、筋や神経の
調節に必要な分を補うため、骨がもろくなってスポーツ傷害
の原因となる。丈夫な骨を作るため、特に成長期は乳製品、
野菜、小魚をしっかり食べるようにする。
鉄は酸素の運搬に係る血中ヘモグロビン、筋肉中のミオグロビン
の構成成分であり、不足すると貧血になる。鉄を多く含むの
は、レバー、赤身の肉や魚、貝、ほうれん草である。
ビタミン
ビタミンにも多くの種類がるが、コンディーショニングを考える上で
重要なのはビタミンB群とC群である。
ビタミンB1、B2、B6はそれぞれの糖質、脂質、蛋白質の代謝
に関与するので、食事量が多くなれば、それだけ摂取量を
増やさないと、エネルギー合成が円滑に進まないばかりか、体内
に老廃物が蓄積する恐れがある。ビタミンCはコラーゲンの
合成、ストレスの防止、抗酸化機能などさまざまの動きを
もっている。
いずれも水溶性ビタミンであるので、長時間体内に保持
されないため、3食でしっかりと摂る必要がある。
また、抗酸化機能は、脂溶性ビタミンであるβカロチン
(ビタミンAの前躯体)とビタミン Eにもあることが
わかっている。
これらのビタミンを豊富に含むのは緑黄色野菜、柑橘系の
果物、種実類である。
エネルギー源;
激しいトレーニングにより消費したエネルギーは、食事に
よって補給することが重要である。一方でピーク・パーフォーマンスを
得るために理想的な体重及び体組織を獲得・維持することも
認められる。そこで、消費エネルギー量と摂取エンルギー量
を調節しなければならない。消費エネルギーを正確に測定
する方法として、二重標識水法があり、プロサッカー選手の
試合期の消費エネルギーを測定したところ、平均約4000kcal
であったことをほうこくされている。
一般的に運動の種類、強度、時間により、非運動者の1.5~
2倍のエネルギー消費と概算し、摂取エネルギーはこれを満たす
ように設定する。消費と摂取の調節については、選手の体重
及び体組成を継続的に測定し、これらの推移により摂取
エネルギーを加減するのが現場的かつ実際的であろう。
また、Jリーグでは、より詳細なコンディションの把握法として、年に
数回の血液検査を実施しているチームもある。
●二重標識水法は;
消費エネルギーを正確に測定する方法であり、人体にとって 無害な水素と酸素の安定同位体が含まれた水を飲み、約 2週間にわたり尿中へ安定同位体が排泄される経過を観察 ・測定する方法
PFC比 (プロテイン、ファット、カルボンヒドラット);
エネルギーをつくる3大栄養素PFCである。
| P | F | C | |
| 適正比率 | 12~15% | 20~25% | 60~68% |
| 欧米 | 20% | 40% | 40% |
| 日本 | 15% | 25~30% | 55~60% |
日本の食事は糖質が多いため、適正値おおむねであり、 これは国内外のスポーツ栄養学者が推奨する比率にほぼ 等しい。つまり、この比率で摂取エネルギーが消費エネルギー とつりあっているならば、3大栄養素は十分量を摂取すること ができる。
ミネラル・ビタミン;
●ミネラル・ビタミンの選手における理想摂取量
| カルシウム |
| 所要量の2倍の1200mg |
| 鉄 |
| 所要量の2~3倍相当する20~30mg 上限値は40mg |
| ビタミン |
| B1,B2、Cともに所要量の2~3倍 水溶性ビタミンであり、体内に滞留する時間は長くないため、 3度の食事のつど摂取する |
カルシウムは、運動による汗からの損失が知られており、
また、所要量の2倍を摂取することにより、骨密度が高まる
ことが報告されている。そこで、選手の場合は、汗からの損失
および骨の発達を考慮して、所要量の2倍となる1200mgを
摂取することが進められる。
鉄は選手の場合、代謝が高まることによる汗や便中への
排泄も増加することが考えられるので、所要量の2~3倍に
相当する20~30mgの摂取が進められる。
鉄については、「第六次改定日本人の栄養所要量」において、
上限値が40mgに設定されたので、これを超えないように
する。
ビタミンB1は、所要量では1000kcalあたり0.4mg必要と
されているが、選手の場合は、その2倍あるいはそれ以上の
摂取が必要であることが示唆されている。
ビタミンB2については、競技力に関連した研究が現在
みられないが、B1とともに所要量の2~3倍を摂取しておくこと
が進められる。
ビタミンCも同様であり、所要量100mgにたいして選手は
200~300mgを摂取する。いずれも水溶性ビタミンであり、
過剰症の心配はないが、体内に滞留する時間は長くない
ため、3度の食事のつど、摂取するように心かけたい。




